この記事のポイント
・自転車事故の加害者が未成年でも刑事・民事・行政責任を問われる可能性があり、高額賠償が認められた事例も存在する
・自転車保険の加入義務化が進むことで賠償請求しやすくなっており、諦めずに手続を進めることが重要
・自転車事故の被害にあったら、警察への連絡、加害者確認、目撃者確保、現場確認、医師の診断を経て損害賠償請求を行う
大学生が加害者である自転車事故に巻き込まれた場合、加害者が成人である場合と異なり、きちんと責任をとることができるのか、さらに、慰謝料や賠償金を十分に受け取ることができるのか、不安な気持ちを抱いているのではないのでしょうか。
この記事では
- 自転車事故の被害者が知っておくべきこと
- 交通事故の加害者が大学生である場合に知っておくべきこと
を弁護士が詳しく解説します。
大学生など未成年が加害者となる自転車事故が多発している
自転車は誰でも免許なしで乗れる乗り物です。しかし、自転車が加害者となる事故が多発しています。
さらに、自電車が歩行者にぶつかるケースでは、歩行者側の被害が大きくなることも少なくなく、死亡事故も発生しているのです。
自転車による交通事故について、警察庁が提供するデータは次のようになっています。
自転車相互の事故は減少していますが、自転車対人の事故は横ばいであることがわかります。



自転車事故の加害者が問われる責任
一般的に、自転車事故の加害者が問われる責任は次のようになります。
- 刑事責任
- 民事責任
- 行政責任
(1)刑事責任
自転車に乗っている人が過失によって人にケガを負わせたり、死亡させたりした場合、ケガを負わせた場合は「過失傷害」(刑法第209条)、人を死亡させた場合には「過失致死」(刑法第210条)に問われる可能性があります。
さらに、加害者に重過失が認められる場合には「重過失致死」または「重過失致傷」に問われる場合があります(刑法第211条後段)。
| 過失傷害 | 30万円以下の罰金または科料 ※過料:1000~9999円の財産刑 |
| 過失致死 | 50万円以下の罰金 |
| 重過失致死または重過失致傷 | 5年以下の懲役もしくは禁固 または100万円以下の罰金 |
ひき逃げや信号無視をしていた場合には、上記の罪とは別に道路交通法違反が成立する可能性もあります。
もっとも、加害者が未成年(14歳以上かつ20歳未満)である場合、成人と同じように逮捕される可能性はありますが、その後の扱いは異なります。
すべて家庭裁判所に送致され、審判がされたものについては、1.不処分、2.保護観察、3.児童自立支援施設送致、4.少年院送致のいずれかの処分がなされることになります。
※なお、少年犯罪のうち、死刑、懲役または禁錮にあたる罪の事件については、その罪質および情状に照らして、家庭裁判所が検察官に逆走決定をし、大人と同じように裁判所で裁かれることがあります。
参考:少年事件について|検察庁
(2)民事責任
自転車に乗っている人が故意または過失で人にケガを負わせたり、死亡させたりした場合、不法行為責任(民法第709条)を負うことにもなります。
不法行為責任とは、故意または過失によって人の生命・身体・財産を侵害した者はその侵害によって生じた損害を賠償しなければならないという規定です。
つまり、自転車によって人にケガを負わせたり、死亡させたりした場合は、そのことにより生じた損害(治療費、慰謝料など)を賠償しなければならないということです。
近年、自転車が加害者となる交通事故で、数千万円にものぼる高額な賠償金の支払いを命じる判決も出ています。
(3)行政責任
交通事故における行政責任とは、いわゆる免許停止や免許取消のことをいいます。免許のいらない自転車事故は関係ないようにも思われますが、自転車事故によって免許停止や免許取消になることがあるのです。
2012年11月20日、自転車に乗っていた男(当時61歳)がバイクと接触事故を起こし、バイクに乗っていた被害者が鎖骨を折る重傷を負っていたにもかかわらず、逃げしまったという事案で、奈良県警は自動車運転免許の停止処分を決めました。
これは、道路交通法第103条第1項8号が根拠となっているようです。
道路交通法第103条第1項8号によれば、「免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるとき」に免許停止処分をすることができるとしています。
そして、自転車で重い道路交通法違反をした人物が自動車免許を持っている以上、同じような違反を自動車でもおこすおそれが認められるということで、道路交通法第103条第1項8号を根拠に免許停止がなされたということです。
自転車事故であっても、免許停止処分が課されることもあるのです。
参考:自転車で事故を起こして運転免許停止 「それは本当なのか」と驚きの声|J-CASTニュース
大学生である自転車事故の加害者から損害賠償を受けるまでの流れ
自転車の加害者から損害賠償を受けるまでの流れは、一般的に次の通りです。
- 警察へ連絡
- 加害者の確認
- 目撃者の確保
- 現場の確認
- 医師の診断
- 損害賠償請求
では、順番に説明します。
(1)警察へ連絡
交通事故が起きた場合、加害者も警察へ通報することが義務付けられていますが、被害者も連絡する必要があります。
特に、ケガを負った場合には、人身事故の届出をしましょう。
(2)加害者の確認
加害者に慰謝料や賠償金の請求を行うために、加害者が誰であるのか、さらに連絡先を知っておく必要があります。
具体的には、次の項目を確認しておきましょう。
- 加害者の住所、氏名、連絡先
- 加害者が自転車保険に加入していれば、自転車保険の会社名・保険内容
- 自転車の登録ナンバー
(3)目撃者の確保
目撃者の証言は、将来的に加害者とトラブルになった際に、重要となる可能性があります。
目撃者がいれば、氏名や連絡先を聞いておくといいでしょう。
(4)現場の確認
記憶は薄れてしまいます。事故現場の状況、あなたの被害の状況、加害自転車の状況などを写真で撮っておいたり、メモしておいたりするのがよいでしょう。
これも将来的に加害者とトラブルになったときに重要な証拠となる可能性があります。
(5)医師の診断
軽微なケガであっても、交通事故直後にすぐに医師の診断を受けましょう。
事故直後であれば軽微なケガであっても、後で痛みが出てきたり、重症化したりすることがあります。事故直後にすぐに診断を受けることで、事故によって生じたケガであることを明らかにすることができますし、人身事故として届け出ることもできます。
(6)損害賠償請求
ケガの治療がひと段落して、損害額(ケガの治療費など)がある程度確定したら、加害者(加害者が自転車保険に加入していれば保険会社)に対して、慰謝料や示談金の支払いの交渉となります。
まずは、話合いでの交渉となりますが、交渉が決裂した場合には訴訟ということもあります。
そして、交渉がまとまる(示談が成立する)か、訴訟によって支払判決(訴訟の中で和解することもあります。)を得ることで、ようやく慰謝料や賠償金を受け取ることができます。
大学生が加害者の自転車事故でも諦めないで!
加害者が大学生である場合、加害者本人に財産があまりないことがほとんどです。
その場合、慰謝料や賠償金を本人から受け取れないのではないか、さらに、自転車事故であれば、自動車事故よりも慰謝料や賠償金が低くなってしまうのではないか、慰謝料や賠償金を諦めてしまうかもしれません。
しかし、すぐにあきらめる必要はありません。
- 自転車保険の加入率は上がっている
- 自転車事故で高額賠償が認められるケースが増えている
順番に説明します。
(1)自転車保険の加入率は上がっている
自転車保険の加入が義務付ける自治体がどんどん増えています。
加害者が自転車保険に加入している場合、加害者本人に財産がない場合でも、保険会社から十分な慰謝料や賠償金の支払いを受け取ることができます。
現在、次の自治体で義務付けられています。
- 宮城県
- 山形県
- 埼玉県
- 群馬県
- 千葉市
- 東京都
- 神奈川県
- 山梨県
- 長野県
- 静岡県
- 名古屋市
- 金沢市
- 滋賀県
- 京都府
- 奈良県
- 大阪府
- 兵庫県
- 岡山市
- 愛媛県
- 福岡県
- 大分県
- 宮崎県
- 鹿児島県
努力義務を課しているのは、次の自治体になります。
- 北海道
- 茨城県
- 千葉県
- 富山県
- 和歌山県
- 鳥取県
- 徳島県
- 香川県
- 高知県
- 熊本県
実際、自転車保険の加入が都道府県で義務化されたこともあり、自転車保険の加入率は高まっています。
例えば、次の通りです。

加害者が大学生で財産がないと思われる場合でも、自転車保険に加入している可能性も十分にあるので、慰謝料や賠償金の受け取りを諦める必要はありません。
※加害者が未成年である場合、親に請求するのではダメなの?
加害者に責任能力がない場合には、加害者本人ではなく監督義務者である親に請求することができます(民法第712条、第714条)。
しかし、責任能力が備わるのは一般的に12歳前後と言われていますので、それより年齢が高い場合には、加害者が未成年であっても、原則、親に慰謝料や賠償金を請求することはできません。
(2)自転車事故の高額賠償事例
自転車事故であっても、高額賠償が認められる裁判例が増えています。
自転車事故であっても、自動車事故と同じように高額な賠償金となる可能性も十分にあるのです。
自転車事故で高額賠償を認めた裁判例について紹介します。
(2-1)神戸地判平成25年7月4日判決
当時11歳の少年が運転する自転車が歩行していた62歳の女性が正面衝突した事故で、女性は急性硬膜下血腫、脳挫傷、頭蓋骨骨折等のケガを負い、植物状態になりました。
裁判所は、加害者が前方を中止していなかったこと、高速度で走行していたことを指摘し、加害者に過失がある一方、被害者に過失があったとは認めがたいとして、被害者に対し、9500万円以上の賠償金の支払いを命じました。
(2-2)東京地裁平成20年6月5日判決
男性が片手にペットボトルを持ったまま、下り坂を、スピードを落とさずに自転車を走行させ、信号機のない交差点に差し掛かったところ、主婦であった当時38歳の女性に衝突し、女性は路上に転倒しました。
そして、女性は頭部を強く打ち、事故から2日後に死亡しました。
裁判所は、男性には走行態様に過失がある一方、女性には全く落ち度がないことから、6700万円以上の賠償金の支払いを命じました。
自転車事故の加害者が大学生だったときは弁護士への相談がおすすめ
(1)十分な賠償金を受け取れるように交渉を進めてもらえる
被害者が請求できる慰謝料や賠償金にはさまざまな項目があります。弁護士に依頼することで漏れなく、適正な金額の賠償金を請求することができます。
さらに、慰謝料や賠償金の算定は、一般的に「弁護士の基準」が最も高額となりますが、「弁護士の基準」が使われるのは弁護士が交渉に携わった場合に限られます。
そのため、弁護士が交渉に関与することで、当初保険会社や加害者から提示された金額より上がることが多いのです。
十分な慰謝料や賠償金を受け取るためには、弁護士交渉を委ねることがおすすめです。
慰謝料や賠償金の項目については、自動車の交通事故と基本的に同じですので、慰謝料や賠償金の項目について、さらに詳しく知りたいという方はこちらをご覧ください。
(2)交渉をすべて任せて治療に専念できる
自転車事故でケガを負った場合、ケガの治療に合わせて、慰謝料や賠償金の交渉も行うことは被害者にとって過大な負担となります。
加害者が自転車保険に未加入の場合、慰謝料や賠償金の交渉は加害者本人と行うことになります。加害者本人がものわかりのいい人ならいいですが、交渉が難航したり、新たなトラブルを起こしたりすることもあるのです。
さらに、自転車保険に加入していた場合であっても、慰謝料や賠償金の交渉は加害者側の保険会社と行います。こちらはトラブルになることはありませんが、専門用語を使って、いいくるめられたり、納得のいかない金額なのに示談を迫られたりすることがあります。
ケガの治療を行いながら、このような交渉を行うことは、被害者にとってかなりストレスです。
弁護士に交渉をすべて任せることで、このようなストレスから解放されると同時に、治療に専念することができます。
【まとめ】大学生が加害者の自転車事故での損害賠償でお悩みの方は弁護士にご相談ください
大学生が加害者である自転車事故では、本人に財産はなく、さらに、親に慰謝料や賠償金を請求することもできないことから、慰謝料や賠償金の請求を諦めてしまうこともすくなくありません。
しかし、近年では自転車事故による高額な賠償判決がくだされるケースが増加傾向にあり、条例で自転車保険の加入を義務付ける自治体も増えています。
加害者が自転車保険に加入している場合、保険会社との交渉で賠償額の増額が見込める可能性があります。
加害者側の自転車保険会社から提示されている賠償金額に納得がいかないという方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
この記事に関連するよくあるご質問
加害者は未成年者でした。 その親に損害賠償を請求できないのでしょうか?
親が運行供用者に当たる場合(車が親の所有名義である場合等)は、運行供用者として親に損害賠償を請求できます。
また、加害車両の所有者が子供である場合も、親が自動車を購入したり、ガソリン代や保険料等、維持管理費用も親が支出したりしているときには、親の運行供用者責任が認められるのが通常です。
また、「親が相当の監督をすれば事故の発生を防止できたケース」「監督をしなければ事故の発生する恐れが高かった場合などに親が監督を怠ったケース」についても、未成年者の行為による損害の発生につき、少年の親に独自の責任が認められる可能性があります。たとえば、加害者が無免許運転・酒酔運転や信号無視を繰り返していたのを知りながら放置していたケースで、親権者に対して損害賠償請求をすることができるとした裁判例があります。
交通事故に遭ったら、まずどうすればいいのでしょうか?
事故を証拠に残しておくためにすべきことを、下記にご案内します。
1.必ず警察へ連絡してください
のちに交通事故証明書を取得する際の記録の根拠とするためです。
また、実況見分を行ってもらう上で、事故を警察に認識してもらうことは不可欠だからです。
2.加害者からさまざまな情報を取得
自動車のナンバー
これがわかると、後日陸運局で加害者車両の自動車登録事項証明書(いわゆる「車検証」です)を取得することができます。費用は、現在証明であれば300円です。
名刺
勤務先情報を入手することができます。
運転免許証
加害者の住所、氏名がわかります。
自動車登録事項証明書
とくに、ここでその自動車の所有者と運転者が違う場合、所有者の情報を記録しておいてください。運転者が経済的に困窮していて賠償が困難な事情があったとしても、所有者から賠償を受けられる場合があります。
加害者の自賠責保険、任意保険の会社名
通常、加害者個人では賠償できないので、保険会社がどこかという情報は非常に重要です。
加害者の事故直後の言い分の録音、メモ
事故から時間が経って、争いが出てきたときに、加害者が最初どう言っていたかということが重要な証拠になる場合があります。
3.現場の情報を証拠として残しておく
現場や破損した自動車の写真などを撮影するなどしておきましょう。
携帯電話のカメラ等でも構いません。車両が壊れてしまったことによる損害(物損)について争いになったとき、役に立つことがあります。事故状況をできるかぎり把握・記録しておきましょう。
上記に加えて、保険会社との対応をスムーズにするために、自分の加入している任意保険会社へも連絡しておきましょう。ここまでやっておけば交通、交通事故直後の行動としては十分です。
弁護士に依頼をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
弁護士に交通事故被害の依頼をする主なメリットは以下のとおりです。
- 慰謝料などを増額できる可能性が高まる
- 保険会社への対応を一任できる
- 適切な後遺障害等級認定を獲得できる可能性がある
交通事故で後遺症が残った場合、後遺障害として認定されると後遺障害慰謝料を請求できるようになります。
適切な等級の認定により、賠償金額が増額する可能性がありますが、後遺障害等級認定の申請手続は複雑です。法律的・医学的な専門知識も必要となるため、交通事故に詳しい弁護士に対応してもらうことをおすすめします。
また、保険会社との交渉は、経験豊富な担当者と直接やり取りを行う必要がありますが、多くの方は交通事故など人生で何度も遭遇するものではなく、知識と経験の差が大きいです。
実は、保険会社の提示してくる示談金は保険会社独自の基準に従っており、裁判をしたならば認められる弁護士基準(裁判所基準)を大きく下回ります。
そのため、示談提示をしているにもかかわらず、「そういうものなのか」と言いくるめられてしまうことも少なくありません。
これに対し、弁護士に依頼すれば、保険会社の提示する示談案を検討し、不合理な点については的確に反論してもらえるだけでなく、弁護士基準に従って適切な賠償を受けられる可能性が高まるのです。
アディーレでは、埼玉県のさまざまな地域にお住まいの方から、お問合せいただいております。
川越にお住まいの方で、交通事故の賠償請求をしたいならアディーレにご相談ください。
【対応エリア】さいたま市西区・北区・大宮区・見沼区・中央区・桜区・浦和区・南区・緑区・岩槻区、川越市、熊谷市、川口市、行田市、秩父市、所沢市、飯能市、加須市、本庄市、東松山市、春日部市、狭山市、鴻巣市、深谷市、上尾市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、朝霞市、和光市、新座市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、三郷市、坂戸市、鶴ヶ島市、日高市、ふじみ野市など
弁護士は、大学入試・司法試験など型にはまった試験を課せられてきており、保守的な考え方に陥りやすい職業だと私は考えます。依頼者の皆さまの中にも、「弁護士=真面目」、言い換えれば頭が固い、融通が利かないというイメージをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。私はそのようなイメージをぜひ打ち破りたいと思っています。「幅広い視野、冒険心・挑戦心、そして遊び心を持った弁護士でありたい」、「仕事に真摯に取り組むのは当たり前だが、それ以上の付加価値を皆さまにご提供したい」。それが私のモットーです。